

福岡管区気象台「福岡県西方沖地震から20年」特設サイトから引用
今日は、福岡市を語るうえで忘れてはならない「警固断層(けごだんそう)」について、できるだけ平易に、でもしっかりと調べた内容をまとめてみたいと思います。地震リスクと備えを考えるヒントにもなる記事にできれば嬉しいです。
1. 警固断層とは?
概要・分布
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警固断層(けごだんそう)は、玄界灘(海域)から博多湾、福岡平野を通って、筑紫野あたりまで延びる活断層帯の一部です。 ed.oita-u.ac.jp+4jishin.go.jp+4jishin.go.jp+4
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活断層としては、北西側(海域側)と、福岡市街地を含む南東側の区画とに大まかに分けて議論されることが多く、特に“南東部”が注目されています。 株式会社長崎材木店一級建築士事務所+4webmap.city.fukuoka.lg.jp+4国土地理院+4
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活動履歴では、南東部ではおよそ 4,300〜3,400年前 に動いたという調査もあります。 jishin.go.jp+3webmap.city.fukuoka.lg.jp+3だいち災害リスク研究所 – さくら事務所+3
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この断層が「断層帯」として扱われるのは、地上(陸域)に加えて海底部にも延びている線上構造を含むからです。 国土地理院+2jishin.go.jp+2
構造・性質
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警固断層帯は、左横ずれ型の断層であるという見方がされています。南東部が活動した場合、最大で約 2メートル程度のずれ が生じる可能性も想定されています。 だいち災害リスク研究所 – さくら事務所+2jishin.go.jp+2
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福岡市中心部では、地表における微妙な変位(沖積面の変位など)を捉えようという研究もなされており、空中写真で断層トレースを読み取る試みも報告されています。 ed.oita-u.ac.jp
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また、断層の位置については複数の文献でトレースが少し異なることが指摘されており、確定的に「この線が断層だ」と断じるのは難しさがあります。 ed.oita-u.ac.jp+1
2. リスク・想定される被害
警固断層が活動した場合、どのような被害が想定されているのか。地震被害、揺れやすさ、建物被害、人的被害、そして備えの視点から確認しておきたい点を整理します。
想定マグニチュード・揺れ
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警固断層南東部が一度に動いた場合、 マグニチュード 7.2 程度 の地震が起こる可能性がある、という見解もあります。 jishin.go.jp+4webmap.city.fukuoka.lg.jp+4国土地理院+4
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福岡市の「揺れやすさマップ」では、警固断層帯南東部を震源と仮定した際、多くの地域で 震度6強 の揺れが想定されるという予測も掲載されています。 jishin.go.jp+3福岡市公式サイト+3福岡TNCニュース+3
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ただし、断層位置、地盤の性質、建物構造、揺れの伝播など多くの要素が複雑に絡むため、想定どおりになるとは限りません。
建物被害・人的被害
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地震による建物損害(全壊・半壊)は大量に出る可能性が高いとされます。福岡市役所版の資料では、「警固断層帯南東部で地震が発生したら、平成17年(2005年)の西方沖地震時よりもはるかに多くの建物が倒壊し、多数の犠牲者が出る」という警告がなされています。 福岡市公式サイト
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ニュース報道では、もし警固断層南東部での地震が起きたら、福岡市内で震度6強以上、死者1,000人超、建物全壊1万8,000棟超といった被害想定が紹介されているものもあります。 福岡TNCニュース+2RKB毎日放送+2
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建物被害だけでなく、液状化や地盤かぶり、土砂崩れ、ライフラインの断絶なども現実的な懸念になります。過去の福岡県西方沖地震では博多湾沿岸部で液状化被害が観測された例があります。 YouTube+2jishin.go.jp+2
「ねじれ」構造の危険性
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複数報道で「日本一危険な断層」といった表現が使われるのは、この断層の「ねじれ」が一部で指摘されているからです。つまり、海域側と陸域側でずれやすさ・応力の具合が異なる可能性があって、部分的な歪みが残っている状態とも言われます。 jishin.go.jp+4TBS NEWS DIG+4TBS NEWS DIG+4
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この“ねじれ”形状が正しく理解・評価されていないと、想定とは異なる断層運動が起こるリスクもあるとの指摘もあります。 国土地理院+3TBS NEWS DIG+3TBS NEWS DIG+3
3. 福岡市・地域での対応・備え
せっかくのブログ記事ですから「では私たちはどう備えるか」を具体的に書き残しておきたいと思います。
行政・都市整備レベル
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福岡市は「揺れやすさマップ」を公開しており、住んでいる場所でどれくらい揺れる可能性があるかを確認できるようにしています。 福岡市公式サイト+1
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また、新しいビルでは免震構造や制震装置を採用する例も増えています。ニュース記事では、天神のビルに免震装置を導入しているという紹介もあります。 TBS NEWS DIG+1
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福岡市条例レベルで「高度利用地かつ揺れやすい地域」には、追加的な設計対策を求めるような規定も検討・導入されてきています。 福岡市公式サイト+1
個人・住まいレベルでできること
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耐震診断・補強・建て替え
特に築年数の古い建物は一度、耐震診断を受けることが重要です。必要なら耐震補強、制震ダンパーの導入などを検討するべきです。 福岡市公式サイト+2株式会社長崎材木店一級建築士事務所+2 -
家具・インテリアの配置見直し
重い家具を高いところに置かない、転倒防止器具を付ける、寝室の近くに倒れてくる可能性のある家具を置かない、などの工夫はすぐ始められる対策です。 -
日常備蓄・避難ルート確認
非常食、水、懐中電灯、応急セットなど最低限の備えを整えておく。家族で避難場所、ルート、連絡方法を確認しておく。 -
地盤調査・土地選定(新築時)
もしこれから土地を買って家を建てるなら、地盤の揺れやすさや断層近傍でないかを確認できる業者・資料を活用するべきです。断層直上は避けたい。 -
情報収集と訓練
自治体の防災情報、ハザードマップ、地震速報アプリ、避難訓練などを活用。日頃から備えておくことが被害を減らす鍵になります。
4. 注意したい点・不確定性
警固断層について語るときに、特に注意すべき点、不確定性もあります。
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活断層の位置・トレースの確定性:さきほども触れましたが、学術的には断層の正確な線を一本で示すことは容易ではなく、複数の説・修正版が存在します。 ed.oita-u.ac.jp+2国土地理院+2
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活動周期と地震のタイミング:活断層は千年、数千年のスパンで動くことが多く、人の寿命や歴史記録的には把握が難しい。だから「今すぐ来る/来ない」は断定できない部分があります。 jishin.go.jp+3だいち災害リスク研究所 – さくら事務所+3jishin.go.jp+3
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想定条件(マグニチュード、震度、ずれ幅など)の前提仮定:異なる研究者・機関で使われる前提が異なるので、予測値には幅があります。
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他の地震リスクとの複合:警固断層だけでなく、福岡県には他の断層帯(たとえば福智山断層帯、水縄断層帯など)もあり、また南海トラフなど日本全体の地震リスクとも重なる可能性があります。 jishin.go.jp+1
5. まとめと私なりの考察
福岡市およびその周辺に住む私たちにとって、警固断層は決して “過去の話” ではなく、将来のリスクのひとつです。特に市街地直下を通る可能性がある断層ゆえ、被害が都市インフラや人口密度の面で大きくなる懸念があります。
ただし、断層が必ず動くとは限らないし、どの程度ゆれるか・どこまで被害が出るかは予測しきれない側面があります。だからこそ、備え・日常対策・耐震化・情報共有が非常に大切になります。
- 投稿者: mikoda
- 投稿日: 2025年10月9日